印度武術王国

サンガム印度武術研究所が、いまだ知られざるインド武術について紹介します。

クリシュナの炎の車輪:バナーティ(Banathi)

バナーティはオリッサ州のプーリーを中心に伝承される、ロープの両端に炎のボールを付けて回す回転技だ。

別項で紹介したパイカ・アカーラの中でもバナーティは一部実践されており、この技が本来は戦士の武術に由来する事を示している。戦場ではバナーティの炎の演武が最前線の先鋒として全軍を鼓舞する役割を果たしていたという。

また同じ技が鎖と分銅を使用した実戦的な投擲武器として、あるいはその回転によって降り注ぐ矢の雨を防ぐ動的な盾として活躍したという話も聞いた。

ごく普通のオジサンたちが妙技を見せる

語源的にはBaは火をNatiは棒を意味する様だが、ここでは棒の代わりにロープの端に錘もしくは火の玉を付けたものを使用する。

技術的にはインド全土で普及する棒術の回転技に近いが、ソリッドでないロープを使うことによる特異な技が含まれ、その難易度は格段に高いものがある。

現在はジャガンナート寺院の大祭パレードでのファイヤー・デモンストレーションが中心で、熟練プレイヤーのビシュヌ・ダッタ氏によれば、回転する炎の車輪がクリシュナ神ジャガンナート寺院の主神)の投擲武器スダルシャン・チャクラを象徴していると言う。

その実態は武術というよりも伝統芸能や大道芸に近い形で、特に青少年の体育エクササイズとして普及活動が行われているが、近代化が進み著しい経済発展を遂げつつある社会状況の中、若年層の関心も薄れ、消滅の危機に瀕している。

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中央Rama Chandra Suar師と奥さんと愛弟子Bishnuさん

また、類似したBanetiの名で、シランバムに似た棒術が広くベンガル地方から北インドに普及している。ダヌヴェーダという北インドに普遍的な武術聖典に由来するバナーティが、オリッサだけに限定されるものでは無い、というのはごく自然な話で、今後の調査が待たれる所だ。

 

 

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