マニプールの伝統武術:タン・タ(Thang-ta)
タン・タ(Thang-Ta)は北東部インド、マニプール州の主要民族メイテイ人が実践する伝統武術。タンは剣を、タは槍を意味し、幅広い武器技を含んでいる。
タン・タは本来フィエン・ランロン(Huyen langlon)と呼ばれる総合武術の武器技部門を指す呼称で、徒手技部門のサリット・サラック(Sarit Sarak)と合わせて民族武術を構成している様だ。
その歴史的地理的な近接性から、ミャンマーの民族武術と非常に近しいと言う。下のビデオを見ると、武器技に関してはインド平野部のそれと、様々な体術に関しては中国クンフー的なニュアンスも感じられる。
タン・タのプロモ動画。英語だがかなり詳細な解説
こちらも英語だが、タン・タを概観できる
筆者は未だマニプールには行った事がなく現地で実見はしていないのだが、2010年のマハラシュトラ州の取材で、偶然タン・タの道場を発見した。
マニプールに道場を持つプレム・クマール師に師事したマハヴィール氏によってアムラヴァティに支部道場が開かれていたのだ。
マハヴィール氏(中央白シャツ)と門下の道場生たち
マハヴィール氏(白シャツ)指揮下のタン・タ道場演武
Youtubeにアップしたこの動画に対してはマニプル人からと思われる「これはタン・タではない!」と言うクレームが何回か入っており、おそらくマラーティであるマハヴィール氏によって少なからずローカライズされてしまっている可能性がある。
特に棒術の回転技に関しては氏自身マラーティ・スタイルだと明言しており切り分けが必要かも知れない。体術に関してはフィエン・ランロンのサリット・サラック部門を『タン・タ』と言う総称の下に実践していたのだろうか。
ツイッターで回ってきたインド東北部のものと思われる下の映像を見ると、子供ながら非常に巧緻でスピーディな技を持っている。 これがタン・タであるかどうかは未確認だが、インドの辺境にこの様な武術が存在する事には驚いてしまった。
インドの辺境に住むチビッコ達のチャンバラが凄すぎる。 pic.twitter.com/tMnk7WNCpA
— シタール奏者 石濱匡雄 (@ishihama) February 18, 2019
マニプールをはじめとした北東部インドは、余りにも奥地過ぎて中々足を踏み入れる事が出来なかったが、近年外国人の入域も容易になってきた様で、いずれ探訪して武術交流を深めたいと思っている。
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