印度武術王国

いまだ知られざるインド武術について紹介

Kadathanad K.P.C.G.M. Kalari Sangam / Vadakara

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マスター:Madhu Puthuppanam Gurukkal

Reg. No. 25/63 Puthuppanam Vadakara Calicut Dist. Kerala India

Ph:0496-2528135

https://www.facebook.com/kpcgm.kalari/

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弟子の礼拝を受けるマドゥ・グルッカ

近代カラリパヤット中興の祖、C.V.N.Nairの師であるKottakal Kanaranグルッカルはワダカラに生まれ、当地のカラリパヤットの伝統を受け継ぎそれを弟子ナイールに伝えた。

後で取り上げるLokanarkavu寺院と共に、ヴァダカラがカラリパヤットの聖地と言われる由縁だ。

そのような歴史を背景に、当地には沢山のローカル・カラリが存在する。

特にワダカラ地域の伝統はカダッタナードゥ・スタイルと呼ばれ、C.V.N.スタイルによってスポイルされる以前の古式を今に伝える事で、カラリパヤット界の中で独自の存在感を示している。

今回紹介するKadathanad K.P.C.G.M. Kalari道場の歴史は200年以上あり、マドゥ・グルッカルがオッタ・パヤットの名手として知られた父、Kadathanad Chandran グルッカルのあとを継いで現在に至る。

道場は国道から少し北上した丘陵地帯の集落に静かにたたずむ。他の道場と比べて、その稽古は極めて特徴的。道場の造りと共に、私が歴訪した中では最も伝統的な古式の形を今に伝える道場だ。

f:id:Parashraama:20190613155946j:plain現在では珍しい椰子の葉葺きの道場

f:id:Parashraama:20190613160008j:plain稽古用のカッチャ褌を巻く

f:id:Parashraama:20190613160030j:plain右端がグルッカルの娘さん

f:id:Parashraama:20190613160105j:plain神々の祭壇への礼拝

f:id:Parashraama:20190613160741j:plain椰子の葉を編んで屋根を葺く

f:id:Parashraama:20190613160805j:plainこの柔軟性

訪ねたのは2007年初頭で、とにかくコテコテのローカル・カラリなので英語も余り通じず、取材時には文字通り以心伝心で会話をした記憶がある。

子供の入門者が圧倒的に多く、マドゥ・グルッカルに娘がいるせいか男の子と同じくらい女の子が稽古しており、言葉が余り通じない中彼女たちが中心になって全面的に取材に協力してくれて、様々なデモを見る事ができた。

f:id:Parashraama:20190613161713j:plain女子部隊

f:id:Parashraama:20190613161733j:plain男子部隊

f:id:Parashraama:20190613161810j:plain口に咥えた花を足で受け取る

f:id:Parashraama:20190613161832j:plainナタラージャ・アサナ

f:id:Parashraama:20190613161853j:plain稽古後の礼拝

f:id:Parashraama:20190613161935j:plain大人の弟子とグルッカ

上の写真には幾層かに分かれた土の壁が映っているがこれは「地層」で、この道場は伝統的なクリカラリという掘り抜き型の構造を持っている。

分かり易く言うと、彼らはプールの様に四角く掘り込んだ地面の中で稽古をしている訳だ。

この半地下構造による地温の低さと吹き抜けの壁を通り抜ける風によって修行者の身体は適度に冷やされ、熱帯の国ケララでも一年を通じて快適に稽古を続ける事が出来るのだ。

また高度なヨーガのポーズも写っているが、マラカンブでも見られるように彼らにとっては難易度の高いヨーガ・アサナもひとつの準備運動で、多くのカラリ道場が修行の中にヨーガ・アサナを取り入れている。

実際の稽古風景は百万言を費やすよりも動画を見た方が一目瞭然だろう。子供中心だが、高度な柔軟性と共にCVN系には見られない歯切れの良い力強さが見て取れるはずだ。

カラリの内部は光量に乏しく、当時のカメラでは余りきれいに撮れてはいないが、その独特な雰囲気は充分に感じ取れるだろう。

カラリパヤットでは男の子は伝統的にカッチャと言う褌一丁で稽古をするのだが、その褌の巻き方も見せてくれたので動画を貼って置く。

非常に長いさらしの様な布を下腹に何重にも巻いていくその様子は、相撲の「まわし」にも似てとても興味深い。

カラリパヤットの根底にはクンダリーニ・ヨーガの思想と実践が横たわっており、褌をきつく巻き上げる事によってチャクラの活性を高める、という方法論がある様だ。

この点は日本武道における臍下丹田にも通じるものがあって、これは個人的な仮説なのだが、相撲や柔術など日本の伝統的な武道には、歴史のどこかでインド武術の遺伝子が入り込んでいるのではないか、と感じている。 

 

 

旧版の『印度武術王国』執筆時には「幼い子供達が大勢通い、その柔軟性の高さとスタミナはレベルが高い。10年後がとても楽しみな道場だ」と書いたのだが、その10年が過ぎた現在、傑出した若手を多く擁する有力なカラリに成長した様だ。 

当時の話では、外国人が入門する場合「滞在は1ヶ月2千ルピー前後で近在の民家に間借りできる。稽古・指導料は月5千ルピーから。食事は自炊、もしくは千から2千ルピー程度で、賄を頼む事になる」という事だったが、この間物価の上昇も著しいので、滞在修業を希望する場合は直接問い合わせが必要だ。

10年が過ぎた現在でも外人受け入れ歴がほとんどない様子で色々と困難も予想されるが、ただ見学するだけでも貴重な体験になるのは間違いないので、機会があれば是非訪ねてみて欲しい。

アクセス:ワダカラのバス・スタンドから南へQuilandi行きのローカル・バスに乗ってAravinndagosh Road下車。商店の角を東に曲がってオートで5分。歩いて20分。早朝や夕方はオートがつかまらないので、バススタンドから直でオートに乗るのが一番確実。

見学したい場合は直接電話するか、あるいは会話の問題も考えるとFacebookの英文メッセージで事前に相談した方が良いだろう。

私がワダカラを訪ねたのは2007年冬の一度きり、わずか数日の滞在中四つのカラリ道場を取材して回るというハード・スケジュールで、観光らしきものは何一つできなかったのだが、ひとつだけ重要なヒンドゥ寺院を訪ねたので最後にそれを紹介しよう。

冒頭に紹介した様にワダカラはカラリパヤットの聖地と称されているのだが、その焦点となるのがLokanarkavu寺院だ。 

中世ケララ・カダッタナードゥ地方の英雄詩『Vadakkan Pattukal』のヒーロー、Thacholi Othenanはカラリパヤット仕込みの戦士だったが、彼が武術を極め戦勝を得る為に毎日祈願した寺院が、ドゥルガ女神を主神とするこのロカナルカヴ寺院だと言われている。

その為、年に二度ある大祭では様々な奉納舞いと同時にカラリパヤットの演武も執り行われ、カラリの戦士たちはその人生の節目に当たってはこの寺院にお参りするのが習わしとなっている。

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寺院はケララの伝統的な木造建築で建てられており、その作り込まれた破風飾りと共に一見の価値があるだろう。

 

 

 

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